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借地権について [相続に強い不動産鑑定士]

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先日、横浜市内の借地権付建物の評価をいたしました。

 

建物はすでに40年以上経ているので、建物の経済価値はありませんが、借地権が存続するので、借地権価格があります。 

 

しかしながら、借地権価格は、通常基準とされといる財産評価書(いわゆる路線価格)と比較して、大幅に低下していることを改めて実感しました。

  

では、地主さんの底地(借地権の付着した土地の所有権)の割合が上がっているかといえば、そうではありません。

例えば、路線価では借地権と底地の割合が、6:4であっても、実際のマーケットでは、借地権割合も底地の割合も低下しています。

 

底地や借地権を買い取る不動産業者がいますが、業者の買い取り価格は、底地、借地権いずれも路線価の割合よりも相当低いのが通常です。

 

つまり、更地価格=底地+借地権にはならなず、 更地価格>底地+借地権となります。

唯一例外は、地主さんと借地人が共同して、これらの権利を同一人に売却する場合です。

 

この場合は、買主はその土地の所有権を得ることとなりますから、その土地を相場で購入する可能性があります。

 

それでは、なぜ、借地権割合が低下しているかというと、都心の一等地などを除いて、借地権の需要が少ないことに起因しています。

 

借地権価格とは、地代がその土地の経済価値に見合った地代よりも相当低く設定されていることによって、借地人の借得が発生し、この借得部分が借地権価格の発生の根拠となっています。

 

地主が土地を貸して、その借地人に借地権価格が発生し、売買の対象となる。

 

地主には地代を受け取る以外に何のメリットもない。(厳密には借地権の売買にあたっては、名義書換料、建物の建替え時には、建替え承諾料の授受はあります。)

普通に考えれば理不尽な話ですが、少し難しくなるかもしれませんが、借地権の価格が発生した経緯を見てみましょう。

 

明治42年建物保護法が成立しました。この法律は、建物を登記することにより借地権を第三者に対抗できるといいうものです。

 

土地は、地主さんのものですから土地を借地人が登記することはできません。

では、地主さんが変われば、借地人は建物を取り壊さなければいけないかというと、建物を登記することによって、新たな地主さんに対抗できる。

つまり、借地権が認められるということです。

 

次に大正10年に借地法が制定されました。

これは、借地権の最短期間(木造の場合20年)が保証されました。

これによって、借地権の財産的価値が認識されるようになったといわれています。

 

そして、昭和16年の借地法の改正です。

期間満了時、地主が更新を拒絶する場合、正当事由がなければ認められないということです。

その経済背景には、持てる者と持たらざる者との格差が大きいため、弱者救済の目的があったかと思います。

 

同じ年、羅災都市借地借家臨時措置法が制定されました。

この法律によって、借地権は次第に強化され、財産的価値がより強く認識されるようになりました。

 

その後、地価の高騰、都市部を中心とした住宅地不足、インフレの進行などによって、土地を新たに貸す場合、権利金の授受が慣行的に行われるようになりました。昭和35年以降には、まれに土地の賃貸が行われる場合、高額な権利金(借地権価格)の授受が行われ、また、名義書換料、契約期間の更新の場合には更新料の授受が行われるようになり、借地間価格の発生が当り前のように認識されてきました。

 

昭和41年の借地法の改正により借地非訟事件手続きが創設され、一定の制約や地主への反対給付があるにせよ、借地人はその借地権を処分する自由が認められ、契約条件を変更して、高層の建物に建て替えできるなど、その土地の経済価値に見合った土地の使用収益ができるようになりました。

 

土地の賃借は債権契約ですが、この改正によって、債権でありながら、物件的地位が認められるまでになりました。

 

このようにあまりにも借地人を保護する法律のため、逆に地主側が不利を被るケースが多く、法律の改正を求める意見が多く出ました。

 

そして、平成3年に新借地借家法が制定されました。

 

この新借地借家法は、新たに借地した場合、旧借地法では、期間が非堅固建物造(木造など)の場合、最低20年、堅固建物(鉄筋コンクリートなど)は30年、これ以下の期間を制定した場合は、非堅固建物で30年、堅固建物で60年が法定存続期間となります。

 

新法では、期間は、一律、30年となります。

また、更新は、1回目が20年、2回目以降は10年ごとの更新となります。

 

さらに、定期借地権なるものが制定され、期間は50年以上、更新はありません。

契約満了後は、原状回復して地主に返還するというものです。

これについては、まだ判例がないため、細部がどのようになっているかは不明です。

 

また、事業用借地権というものが設定され、期間は10年以上、20年以下となっており、期間の延長はありません。

 

このように法律の改正が行われ、ある意味で地主に有利な内容となりましたが、この法律は旧借地法に遡及しないこととなっています。

 

つまり、旧借地法で契約した案件については、適用しない。旧借地法がそのまま適用されることとなっています。

 

戦前は、住む場所のない人々を救済しようと地主さんが場所を提供し、わずかな地代でその土地に住まわせていたケースも多々ありますが、それが地主の権利を圧迫し、借地権の権利が価格として構成されるまでになりました。

 

しかしながら、社会的な流れとして、新借地借家法の浸透によって、旧借地権の権利意識を低下させる要因となっていることになっています。

このような状況から、借地権価格は、低下しています。

 

これは何を意味するかというと、戦前、戦前直後は住むところに困り、土地の需要が高まっていました。

 

持てる者は、土地を購入し、持てざる者は土地を借りて住まいを求めました。

 

希少性の高い土地は例外ですが、現在では、一般に土地の供給が増加し、あえて、借地を求めなくても所有権の土地が購入できるということです。

 

地主と借地人との間で、地代、更新料などのトラブルが多くみられ、双方、このような状況を敬遠することから借地権の需要が低下しているとみることもできます。

 

特に地方都市では、借地権という権利はあるが、価格が発生していないというケースもあります。

 

相続税の算出にも影響を及ぼしかねません。

借地権を相続した場合、相続路線価格から借地権割合を乗じた価格が借地権の相続税算定の基礎となっています。

 

路線価格は、市場価格よりも低い、だから路線価で方が節税の点で有利だ。

そう、お考えになるのは、もっともですが、冒頭に申しあげたように、借地権の取引価格は、非常に低下しています。

 

しかしながら、借地権が路線価格で算出した価格よりも低いと主張したとこれで、証明がなければ、税務署は認めてくれません。

 

不動産業者の査定価格では否認されるのがオチでしょう。

 

こんな時には不動産鑑定士の不動産鑑定書がお役に立ちます。

 

もちろん、市場が借地権価格の路線価格よりも高いと判断した場合には、不動産鑑定士の評価は意味ありません。

 

また、不動産鑑定士もこのような場合は、納税者に有利な価格は評価できません。

 

しかしながら、市場価格が、路線価格よりも低い場合は、不動産鑑定士は実地調査を行い、説得力のあるデータを明らかにして、鑑定評価します。

 

税務署はこれを否認する場合、反対の鑑定評価をする必要があると聞いています。

 

しかし、他の不動産鑑定士に依頼しても、同じ評価ならあえて否認することはないと思っています。

 

不動産鑑定士の鑑定評価書には、なんら強制権はありません。

 

つまり、鑑定評価額がどうであれ、売買は売主と買主が合意すれば事足りることですが、このように納税や、争いになった時には、不動産鑑定評価書がお役に立ちます。

 

 この記事に関し、または、それ以外でもご質問があれば、以下のメールアドレスか電話でお問い合わせください。

 有限会社 岡不動産鑑定事務所
 不動産鑑定士 岡 秀次
           ℡045-780-2841

Email:info@kantei-oka.com

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本当は苦情のメールの方が、私どもの今後の糧となるのですが。




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