令和元年地価調査 [不動産鑑定]
令和元年9月20日に各都道府県から7月1日の地価調査価格の発表がありました。
都道府県地価調査は、国土利用計画法による土地取引の規制を適正に実施するため、国土利用計画法施行令第9条にもとづき、都道府県知事が毎年9月下旬に公表する土地評価であります。
評価の対象となるのは全国の約2万地点の「基準地」で、都道府県地価調査では、毎年7月1日を基準日として各基準地につき1名以上の不動産鑑定士等の鑑定評価を求め、これを審査・調整し、毎年9月下旬に公報し、この公報された価格を「基準地価」と言います。
このように都道府県地価調査は、地価公示から半年後の地価を評価するものであるので、地価の変動を速報し、地価公示を補完する役割を担っています。
さて、今回の地価調査の概要は、以下のとおりです。
〇全国平均では、全用途平均が2年連続の上昇となり、上昇幅も拡大しており上昇基調を強めている。用途別では、住宅地は下落幅の縮小傾向が継続しており、 商業地は3年連続、 工業地は2年連続の上昇となり、それぞれ上昇基調を強めている 。
○三大都市圏をみると、全用途平均、住宅地・商業地・工業地のいずれの用途でも各圏域 において上昇が継続し、上昇基調を強めている。
○地方圏をみると、 商業地 が 平成3年以来28年ぶりに上昇 、工業地も平成4年以来 27年ぶりに上昇に転じた。全用途平均・住宅地は下落幅の縮小傾向が継続している。地方圏のうち、地方四市 (札幌市、 仙台市、 広島市 、福岡市 )では、いずれの用途で も上昇が継続し、上昇調を強めている。 地方四市を除くその他の地域においては、全用途 平均・住宅地・ 商業地は下落幅の縮小傾向が継続しており、工業地が平成4年以来27年ぶりに上昇に転じた。
以上が、今回の地価調査の結果は、地価が上昇している地域と下落している地域がより鮮明になってきたように思います。首都圏でも中心部はかなり高い上昇を示しており、特に都心部の商業地の地価は平均で前年比9.8%と約10%の上昇となっています。
来年にはオリンピックを控え、都心を中心に経済的に旺盛な需要を見込んでいるものと思われます。
また、地方でも外国人観光客が大勢訪れる観光地の地価も上昇傾向にあり、さらにネット通販が盛んになり、物流関係者を中心として高速道路インター近くの地価も上昇しています。しかし、何ら特徴もない地方都市や首都圏でも中心部から外れた郊外型の住宅地などは、依然として下落が継続しています。
景気は回復しているように見えますが、その恩恵にあずかれるのはほんのわずかで、多くは地方の地価の下落が示すように景気回復しているとは言い難いのではあないかと思います。
景気の回復や地価の上昇は来年の東京オリンピックまでで、その後は、景気後退するのではないかと言う話をよく聞きます。
確かに、東京オリンピック開催中は、海外から大勢の観光客で賑わい、旺盛な物、サービス需要に支えられ、景気は回復したかのように見えますが、その後は、政府が何らかの景気対策を打ち出さない限り、景気は低迷し、地価もまた下落に転換するのではないかと思います。
昭和39年に初めて東京オリンピックが開催された時期は、インフラの整備が十分ではなく、このオリンピックの開催により、道路交通網の整備、東海道新幹線の運行など、急速に進みました。これらのインフラの整備が、さらなる需要を押し上げていたように思います。しかし、今回のオリンピックは、一過性で終わる可能性が強く、中長期的には景気に大きな刺激とはならないのではないかと思います。
国際的な投資家であるジムロジャーズは、このような日本の現状を講演で次の通り述べています。「日本では、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向かって景気が上昇すると考えている人もいる。確かに、表向きにはオリンピックによるいい面もあるだろう。道路は改善され、真新しいスタジアムが出来上がる。こうした事業に関わった人たちは一定の恩恵を受けられるかもしれない。政治家も、ポジティブな成果をアピールするだろう。
しかし、歴史を見れば、オリンピックが国家にとってお金儲けになった例がないことがわかる。一部の人に短期的な収入をもたらすことはあっても、国全体を救うことにはならず、むしろ弊害を及ぼす。」と述べています。(東洋経済オンライン)
市街化調整区域内の山林 [不動産鑑定]
市街化調整区域とは、「市街化を抑制すべき区域」と定義され、この区域が指定される前からあった宅地を除いて、基本的には宅地造成など開発行為はできません。
但し、一定規模までの農林水産業施設や、公的な施設、および公的機関による土地区画整理事業などによる整備等は可能でありますが、全般的に農林水産業などの田園地帯とすることが企図されています。
これでは、開発業者は住宅地として開発して分譲ずることができませんので、価値がないのではないかと思われますが、必ずしもそうではありません。
特別養護老人ホームなど、開発行為が許可される場合では、地価が市街化区域の土地よりも安いため、道路等の技術基準などの条件が整えば、需要が認められます。
今回は、このようなことを念頭に置いて、市街化調整区域の山林を評価いたしました。
それでも市街化区域の地価よりもかなり低いですが、買い手がある程度限定されることから、ある程度の価格となりました。
市街化区域の価格と比べるとかなり低いと言いましたが、評価した土地は横浜市内の土地です。これが、神奈川県内でも小さな市町村の山林では、需要が弱いため、横浜市の市街化調整区域内の山林と比較して、川崎市などを除いた他の市町村の市街化調整区域の山林は、相当低い価格ではないかと思います。
いずれにしても、市街化調整区域内の山林など、宅地以外の地目については宅地開発ができる用途が市街化区域と比べると大きく規制されており、その山林が他の用途で建築が可能かどうかを見極めることが肝要であると思います。
継続賃料の評価 [不動産鑑定]
底地の評価 [不動産鑑定]
立退料その2 [不動産鑑定]
昨年末に、借家家権の評価の依頼を受けました。
昨年の4月頃から、大家さんから立ち退きを求められ、その場合の立退料についてのご相談をメールで継続したご相談を受けた結果、鑑定評価依頼がありました。
立退料は居住用は借家権の評価となりますが、基本的なことを申しますと、貸主は正当な事由がないのに更新を拒絶したり、明け渡し求めることはできません。
借家権の鑑定評価は、店舗などの場合、相手との交渉で鑑定評価が役に立つ場合がありますが、居住用の場合、費用対効果が小さいように思います。
このようなアドバイスをさせていただきましたが、最終的には、分譲住宅地などと異なり、借家権は相場があるようでないので、不動産鑑定士も考え方に応じて、評価がかなり変わることがあること。
裁判になった場合、双方から異なる鑑定書が提出され、裁判官も判断に困り、裁判所から新たな鑑定評価の依頼がされることがあり、その費用は双方の負担になること。
これでは、住宅の場合、価格が大きくないだけに、双方にとって何のメリットもないことをお伝えしました。
したがって、貸主、借主双方が費用を折半して、信頼できる不動産鑑定士に依頼されることが望ましいとお伝えいたしました。
そしたら、貸主、借主双方が費用を折半することで、借家権の依頼がありました。
不動産鑑定士にとっては、一番理想的なご依頼パターンです。
当然ながら、小生といたしましては、貸主、借主の双方の利益を考えながら、鑑定評価基準に則って評価いたしました。
幸い、それでまとまり、借主さんは相応の立退料を頂いて、退去したということをお聞きいたしました。
このように、利害が対立する双方からご依頼を受ける鑑定評価が、不動産鑑定士冥利に尽きるお思います。
平成28年地価公示発表 [不動産鑑定]
以下は、東京圏内の住宅地、商業地の変動率です。
上の表は見にくいかもしれませんが、表をクリックすると大きくなります。
我が国の景気は昨年からやや鈍ってきましたが、東京圏内は依然として、地価は上昇傾向にあります。
特に都内の中心部である千代田区の商業地域9.4%、中央区が9.7%と高い上昇率を示います。
しかし、実際、現地を調査するとそれ以上に上昇していることを実感しました。
これには外国人投資家などの旺盛な需要に支えられている点も見逃せません。
特に都内の高層マンションは、相続対策もさることながら、中国などの方がかなり買われているようです。物件によっては、過半数以上が外国人投資家が占めている物件も珍しくはありません。
また、大阪では心斎橋近くに設定されている大阪中央5-23(平成28年1月1日時点の地価は8,270,000円/㎡で、前年比45.1%の上昇) 商業地で全国1位の上昇率となりました。
国際的に見れば、やはり日本の中心部の不動産は安全性が高く、魅力的であると思います。
しかしながら、地方に行けば、人気の高いリゾート地などを除いて、依然マイナス傾向にあります。
特に過疎地では、需要が極端に少ないことから、相場が形成されず取引するまで地価が不明であるなどのケースもあります。
前回同様、人の集まる所には、土地、マンション、賃貸など需要は大きいということです。
この記事に関し、または、それ以外でもご質問、言等を以下のメールアドレスか電話でお問い合わせください。
有限会社 岡不動産鑑定事務所
不動産鑑定士 岡 秀次
℡045-780-2841、fax045-780-2847
Email:info@kantei-oka.com
研修会 [不動産鑑定]
12月4日、みなとみらいランドマークで私が所属する一般社団法人神奈川県不動産鑑定士協会が主催する研修会に参加いたしました。
講師は、日本銀行横浜支店長の岩崎 淳先生の「最近の金融情勢について」のタイトルで、神奈川県の経済情勢について、ご講義を拝聴いたしました。
もう一方は、オラガ総研株式会社 代表取締役社長 牧野 知弘先生から「空き家問題について」とのタイトルで受講いたしました。
全国で空き家は820万戸となり、空き家率は13.5%と深刻な問題であること。
これは過疎化が進み地方だけの問題ではなく、東京でも空き家率は10.9%もあるということです。
大阪市は16.9%とかなり高い率となっています。
このままでいくと、住宅の空き家は将来的に1,000万戸を超えるのではないかと危惧されています。
毎年10万戸の住宅が供給され、人口も減少する中、空き家が増加するのは自明の理でありましょう。
空き家は、景観、治安、災害などの点で問題があり、自治体は空き家対策特別措置法を施行して、対策に取り組んでいますが、今すぐ解決できるのは難しいようです。
空き家にもいろいろあり、居住可能な空き家とそのままでは居住できない空き家などがありますが、居住可能な空き家は、訪日外国人へ中長期に賃貸するアイデアもあり、大田区、大阪市では一部で許可されているということですが、全国の空き家の数からみれば、わずかに過ぎず、根本的な対策にはなっていないのが現状の様です。
いや-、今回の研修は非常にためになりました。
多摩地区の不動産鑑定 [不動産鑑定]
約20件の物件を短期間で仕上げるということで、かなりのハードスケジュールとなりました。老体にとってはかなりハードなスケジュールでした。
昨年同様に店舗、住宅、工場、事務所ビル、山林など様々な用途の不動産でした。
東京都の中心部は、旺盛な需要に支えられ、過熱気味の様相ですが、評価対象物件はほとんどの物件が郊外にあることから、昨年と同様に依然として値下がりが続いているという結果でした。
私の住む神奈川県でも、需要が旺盛な地域は横浜市の北東部(つまり東京寄りの地域です。)と川崎市が中心で、依然として値下がりを続けている地域の方が多いように感じます。
東京都の多摩地区、神奈川県横浜市の中心部の基準地価格の平成26年、27年の対前年比は以下のとおりです。やはり、全体的には前年よりも 縮小傾向にあります。
市区名 | 住 宅 | 商 業 | ||
平成26年 | 平成27年 | 平成26年 | 平成27年 | |
変動率 | 変動率 | 変動率 | 変動率 | |
八王子市 | 0.4 | 0.5 | 0.4 | 0.5 |
立川市 | 1.9 | 0.6 | 3.1 | 5.5 |
武蔵野市 | 2.8 | 2.5 | 3.7 | 3.8 |
三鷹市 | 1.0 | 1.1 | 2.5 | 2.8 |
青梅市 | 0.3 | △ 0.3 | 0.5 | 0.9 |
府中市 | 1.6 | 0.9 | 2.4 | 1.3 |
昭島市 | 1.9 | 0.7 | 1.3 | 1.2 |
調布市 | 1.4 | 1.2 | 2.6 | 2.0 |
町田市 | 0.4 | 0.3 | 1.3 | 1.0 |
小金井市 | 1.4 | 0.9 | 2.0 | 1.4 |
小平市 | 1.3 | 0.8 | 1.0 | 0.6 |
日野市 | 1.9 | 0.9 | 1.4 | 0.9 |
東村山市 | 1.5 | 0.8 | 1.1 | 0.9 |
国分寺市 | 0.6 | 0.5 | 2.6 | 2.7 |
東久留米市 | 1.1 | 1.1 | 0.5 | 1.0 |
多摩市 | 0.6 | 0.3 | 0.4 | 0.1 |
西東京市 | 1.1 | 1.0 | 1.6 | 1.7 |
横浜市 | 1.7 | 1.4 | 2.2 | 2.5 |
鶴見区 | 1.9 | 1.6 | 2.4 | 2.5 |
神奈川区 | 2.5 | 2.3 | 2.7 | 3.8 |
西区 | 2.1 | 1.9 | 3.5 | 4.4 |
中区 | 2.2 | 2.0 | 3.2 | 3.5 |
地価調査基準地発表 [不動産鑑定]
平成27年9月に各都道府県から地価調査基準地価格の発表がありました。
以下はその概要です。
【住宅地】
- 緩やかな景気回復基調が続く中、低金利の継続及び住宅ローン減税等の施策による住宅需要の下支えに加え、株価上昇による資産効果等もあって、住宅地の地価は総じて堅調に推移しており、上昇ないし下落幅の縮小が見られる。
- 圏域別にみると、
- 東京圏は、上昇地点の割合はやや減少しているが、半数の地点が上昇している。また、平均変動率は2年連続上昇となったものの、上昇幅は昨年よりやや縮小した。なお、半年毎の地価動向は、前半(H26.7~H27.1)0.4%、後半(H27.1~7)0.5%の上昇 となった。
- 大阪圏は、上昇地点の割合は昨年とほぼ同様に約3割の地点が上昇となる一方、下落地点の割合の減少が続いている。しかしな がら、平均変動率は上昇から横ばいに転じた。なお、半年毎の地価動向は、前半・後半ともに0.2%の上昇となった。
- 名古屋圏は、上昇地点の割合はやや減少しているが、昨年に引き続き半数以上の地点が上昇している。また、平均変動率は3年 連続上昇となったものの、上昇幅は昨年より縮小した。なお、半年毎の地価動向は、前半0.8%、後半0.9%の上昇となった。
- 地方圏は、7割以上の地点が下落しているが、上昇地点及び横ばいの地点の割合が増加し、下落地点の割合の減少が続いてい る。また、平均変動率は下落を続けているが、下落幅は縮小傾向を継続している。なお、半年毎の地価動向は、前半が横ばい、 後半が0.2%の上昇となった。地方中枢都市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)では、上昇地点の割合が増加し、7割弱の地 点が上昇となった。また、平均変動率は3年連続上昇となり、上昇幅も昨年より拡大している。なお、半年毎の地価動向は、前 半1.3%、後半1.4%の上昇となった。
【商業地】
- 緩やかな景気回復基調が続く中、金融緩和による資金調達環境が良好なこと等を反映し、不動産投資意欲は旺盛で、商業地の地価は総じて堅調に推移しており、上昇ないし下落幅の縮小が見られる。また、堅調な住宅需要を背景に利便性が高い地区を中心に商業地をマンション用地として利用する動きが全国的に見られ、上昇ないし下落幅の縮小となった要因の一つとなっている。 主要都市の中心部などでは、外国人観光客をはじめ国内外からの来街者の増加等を背景に店舗等の需要が旺盛であり、また、オフィスについても空室率は概ね低下傾向が続き、一部地域では賃料の改善が見られるなど、総じて商業地としての収益性の高まりが見られる。
- 圏域別にみると、
- 東京圏は、上昇地点の割合は昨年とほぼ同じ水準となり、7割以上の地点が上昇している。また、平均変動率は3年連続の上昇 となり、上昇幅も昨年より拡大している。なお、半年毎の地価動向は、前半1.2%、後半1.7%の上昇となった。
- 大阪圏は、上昇地点の割合が増加し、6割強の地点が上昇となった。また、平均変動率は3年連続の上昇となり、上昇幅も昨年 より拡大している。なお、半年毎の地価動向は、前半1.1%、後半2.2%の上昇となった。
- 名古屋圏は、上昇地点の割合は昨年とほぼ同じ水準となり、6割強の地点が上昇している。また、平均変動率は3年連続の上昇 となり、上昇幅も昨年より拡大している。なお、半年毎の地価動向は、前半0.9%、後半1.5%の上昇となった。
- 地方圏は、依然として7割以上の地点が下落しているが、上昇地点及び横ばい地点の割合が増加し、下落地点の割合の減少が続 いている。また、平均変動率は下落を続けているが、下落幅は縮小傾向を継続している。なお、半年毎の地価動向は、前半が ▲0.1%と下落したが、後半は0.3%の上昇となった。地方中枢都市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)では、上昇地点の割合 が増加し、8割強の地点が上昇となった。また、平均変動率は3年連続の上昇となり、上昇幅も昨年より拡大している。なお、 半年毎の地価動向は、前半1.9%、後半2.7%の上昇となった。
限定価格とは [不動産鑑定]
不動産の鑑定評価において、価格の種類には、正常価格と限定価格があります。
正常価格とは、多くの買い手と売り手が存在する中で成立する価格であります。一般には市場価格と言われています。
鑑定評価でも、この正常価格として評価するのがほとんどです。
限定価格とは、特定の買い手と売り手のみで成立する適正な価格のことを言います。例えば以下の図をご覧ください。
黒枠の土地は、間口が1mしかありません。都市計画区域内においては、間口が2m以上なければ、建築はできません。その隣の土地は、間口が1mの細長い土地で、何ら価値がありませんが、隣接者から見れば、間口が2mになるので、建築が可能となり、隣接者に限定されますが、かなり高い価値となります。これを当事者間だけに限定される経済的合理的な価格、すなわち限定価格となります。
ただし、隣接地と併合すれば限定価格となるのではなく、併合することにより、増分価値が生じた場合だけ、限定価格となります。
ほかにも、宅地開発において、その土地を併合しなければ、開発許可が取れない、地主が借地権を買い取る場合、逆に借地権者が底地を買い取る場合も限定価格になる可能性が高いです。