研修会 [不動産鑑定]
12月4日、みなとみらいランドマークで私が所属する一般社団法人神奈川県不動産鑑定士協会が主催する研修会に参加いたしました。
講師は、日本銀行横浜支店長の岩崎 淳先生の「最近の金融情勢について」のタイトルで、神奈川県の経済情勢について、ご講義を拝聴いたしました。
もう一方は、オラガ総研株式会社 代表取締役社長 牧野 知弘先生から「空き家問題について」とのタイトルで受講いたしました。
全国で空き家は820万戸となり、空き家率は13.5%と深刻な問題であること。
これは過疎化が進み地方だけの問題ではなく、東京でも空き家率は10.9%もあるということです。
大阪市は16.9%とかなり高い率となっています。
このままでいくと、住宅の空き家は将来的に1,000万戸を超えるのではないかと危惧されています。
毎年10万戸の住宅が供給され、人口も減少する中、空き家が増加するのは自明の理でありましょう。
空き家は、景観、治安、災害などの点で問題があり、自治体は空き家対策特別措置法を施行して、対策に取り組んでいますが、今すぐ解決できるのは難しいようです。
空き家にもいろいろあり、居住可能な空き家とそのままでは居住できない空き家などがありますが、居住可能な空き家は、訪日外国人へ中長期に賃貸するアイデアもあり、大田区、大阪市では一部で許可されているということですが、全国の空き家の数からみれば、わずかに過ぎず、根本的な対策にはなっていないのが現状の様です。
いや-、今回の研修は非常にためになりました。
多摩地区の不動産鑑定 [不動産鑑定]
約20件の物件を短期間で仕上げるということで、かなりのハードスケジュールとなりました。老体にとってはかなりハードなスケジュールでした。
昨年同様に店舗、住宅、工場、事務所ビル、山林など様々な用途の不動産でした。
東京都の中心部は、旺盛な需要に支えられ、過熱気味の様相ですが、評価対象物件はほとんどの物件が郊外にあることから、昨年と同様に依然として値下がりが続いているという結果でした。
私の住む神奈川県でも、需要が旺盛な地域は横浜市の北東部(つまり東京寄りの地域です。)と川崎市が中心で、依然として値下がりを続けている地域の方が多いように感じます。
東京都の多摩地区、神奈川県横浜市の中心部の基準地価格の平成26年、27年の対前年比は以下のとおりです。やはり、全体的には前年よりも 縮小傾向にあります。
市区名 | 住 宅 | 商 業 | ||
平成26年 | 平成27年 | 平成26年 | 平成27年 | |
変動率 | 変動率 | 変動率 | 変動率 | |
八王子市 | 0.4 | 0.5 | 0.4 | 0.5 |
立川市 | 1.9 | 0.6 | 3.1 | 5.5 |
武蔵野市 | 2.8 | 2.5 | 3.7 | 3.8 |
三鷹市 | 1.0 | 1.1 | 2.5 | 2.8 |
青梅市 | 0.3 | △ 0.3 | 0.5 | 0.9 |
府中市 | 1.6 | 0.9 | 2.4 | 1.3 |
昭島市 | 1.9 | 0.7 | 1.3 | 1.2 |
調布市 | 1.4 | 1.2 | 2.6 | 2.0 |
町田市 | 0.4 | 0.3 | 1.3 | 1.0 |
小金井市 | 1.4 | 0.9 | 2.0 | 1.4 |
小平市 | 1.3 | 0.8 | 1.0 | 0.6 |
日野市 | 1.9 | 0.9 | 1.4 | 0.9 |
東村山市 | 1.5 | 0.8 | 1.1 | 0.9 |
国分寺市 | 0.6 | 0.5 | 2.6 | 2.7 |
東久留米市 | 1.1 | 1.1 | 0.5 | 1.0 |
多摩市 | 0.6 | 0.3 | 0.4 | 0.1 |
西東京市 | 1.1 | 1.0 | 1.6 | 1.7 |
横浜市 | 1.7 | 1.4 | 2.2 | 2.5 |
鶴見区 | 1.9 | 1.6 | 2.4 | 2.5 |
神奈川区 | 2.5 | 2.3 | 2.7 | 3.8 |
西区 | 2.1 | 1.9 | 3.5 | 4.4 |
中区 | 2.2 | 2.0 | 3.2 | 3.5 |
無料相談会 [相続に強い不動産鑑定士]
今年10月19日に横浜駅東口、横浜そごうとポルタの間の新都市ホールで一般社団法人神奈川県不動産鑑定士協会主催、国土交通省、横浜市後援の無料相談会が実施され、相談員として参加いたしました。
相続、借地、売買、家賃など多岐にわたり、ご相談を受け、大盛況のうちに終了いたしました。
特に今回、相続に関するご相談が多くありました。
相続税改正により、今まで定額控除額が5,000万円+法定相続人×1,000万円までが非課税でしたが、今回の改正で、定額控除額が3,000万円、法定相続人×600万円となりました。
この改正で、今後、相続税を支払う人がかなり多くなることが予想され、相続対策に関するご相談が多く寄せられました。
相続対策による高層マンションの購入を検討されている方(時価と路線価格による開差が大きいため)や暦年贈与を検討されている方など様々でしたが、いずれにしろ、メリットとデメリット必ずあることをお伝えいたしました。
最終的には、その方の判断にお任せするしかないのですが、それでもメリット、デメリットを知ったうえで、決断するとしないのでは大きな違いが出てくるのではないかと思います。
こちらを向いていす方、当士協会の会長さんです。
地価調査基準地発表 [不動産鑑定]
平成27年9月に各都道府県から地価調査基準地価格の発表がありました。
以下はその概要です。
【住宅地】
- 緩やかな景気回復基調が続く中、低金利の継続及び住宅ローン減税等の施策による住宅需要の下支えに加え、株価上昇による資産効果等もあって、住宅地の地価は総じて堅調に推移しており、上昇ないし下落幅の縮小が見られる。
- 圏域別にみると、
- 東京圏は、上昇地点の割合はやや減少しているが、半数の地点が上昇している。また、平均変動率は2年連続上昇となったものの、上昇幅は昨年よりやや縮小した。なお、半年毎の地価動向は、前半(H26.7~H27.1)0.4%、後半(H27.1~7)0.5%の上昇 となった。
- 大阪圏は、上昇地点の割合は昨年とほぼ同様に約3割の地点が上昇となる一方、下落地点の割合の減少が続いている。しかしな がら、平均変動率は上昇から横ばいに転じた。なお、半年毎の地価動向は、前半・後半ともに0.2%の上昇となった。
- 名古屋圏は、上昇地点の割合はやや減少しているが、昨年に引き続き半数以上の地点が上昇している。また、平均変動率は3年 連続上昇となったものの、上昇幅は昨年より縮小した。なお、半年毎の地価動向は、前半0.8%、後半0.9%の上昇となった。
- 地方圏は、7割以上の地点が下落しているが、上昇地点及び横ばいの地点の割合が増加し、下落地点の割合の減少が続いてい る。また、平均変動率は下落を続けているが、下落幅は縮小傾向を継続している。なお、半年毎の地価動向は、前半が横ばい、 後半が0.2%の上昇となった。地方中枢都市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)では、上昇地点の割合が増加し、7割弱の地 点が上昇となった。また、平均変動率は3年連続上昇となり、上昇幅も昨年より拡大している。なお、半年毎の地価動向は、前 半1.3%、後半1.4%の上昇となった。
【商業地】
- 緩やかな景気回復基調が続く中、金融緩和による資金調達環境が良好なこと等を反映し、不動産投資意欲は旺盛で、商業地の地価は総じて堅調に推移しており、上昇ないし下落幅の縮小が見られる。また、堅調な住宅需要を背景に利便性が高い地区を中心に商業地をマンション用地として利用する動きが全国的に見られ、上昇ないし下落幅の縮小となった要因の一つとなっている。 主要都市の中心部などでは、外国人観光客をはじめ国内外からの来街者の増加等を背景に店舗等の需要が旺盛であり、また、オフィスについても空室率は概ね低下傾向が続き、一部地域では賃料の改善が見られるなど、総じて商業地としての収益性の高まりが見られる。
- 圏域別にみると、
- 東京圏は、上昇地点の割合は昨年とほぼ同じ水準となり、7割以上の地点が上昇している。また、平均変動率は3年連続の上昇 となり、上昇幅も昨年より拡大している。なお、半年毎の地価動向は、前半1.2%、後半1.7%の上昇となった。
- 大阪圏は、上昇地点の割合が増加し、6割強の地点が上昇となった。また、平均変動率は3年連続の上昇となり、上昇幅も昨年 より拡大している。なお、半年毎の地価動向は、前半1.1%、後半2.2%の上昇となった。
- 名古屋圏は、上昇地点の割合は昨年とほぼ同じ水準となり、6割強の地点が上昇している。また、平均変動率は3年連続の上昇 となり、上昇幅も昨年より拡大している。なお、半年毎の地価動向は、前半0.9%、後半1.5%の上昇となった。
- 地方圏は、依然として7割以上の地点が下落しているが、上昇地点及び横ばい地点の割合が増加し、下落地点の割合の減少が続 いている。また、平均変動率は下落を続けているが、下落幅は縮小傾向を継続している。なお、半年毎の地価動向は、前半が ▲0.1%と下落したが、後半は0.3%の上昇となった。地方中枢都市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)では、上昇地点の割合 が増加し、8割強の地点が上昇となった。また、平均変動率は3年連続の上昇となり、上昇幅も昨年より拡大している。なお、 半年毎の地価動向は、前半1.9%、後半2.7%の上昇となった。
研修会 [Coffee Break]
伊東市の鑑定評価 [相続に強い不動産鑑定士]
先日、伊東市の収益物件について、ご相談がありました。
土地をご兄弟で持分で所有していることでしたが、その共有持ち分をある一人の方に贈与、または売買して、名義を変えたいとのことでしたが、このような場合、税務署は低廉譲渡にではないか、など目を光らせています。
したがって、適正な価格で売買されたかを証明するものとして、鑑定評価がエビデンス(証明)としての役割を担います。
また、贈与であっても、その基礎となる価格は、鑑定評価を基礎として申告すれば、税務署は適正である限り、否認されることはありません。
そのようなことをお伝えしました。
地価調査基準地 [Coffee Break]
7月10日、三浦海岸駅近くのマホロバマインズで、地価調査基準地の最終分科会がありました。
基準地の鑑定評価の最終チェックでした。
メンバーは、県民の皆さんに適正な情報を示す不動産の価格である基準地について、記入漏れがないか、公法記載事項との食い違いはないかなど、ピリピリとした雰囲気の中で始まりましたが、はれて分科会が終了し、打ち上げとなると、三浦市の名物であるマグロを堪能し、一転して和やかな雰囲気に終始しました。
しかしながら、三浦市の地価は、依然として下落傾向にあり、低迷していることは、非常に残念です。
限定価格とは [不動産鑑定]
不動産の鑑定評価において、価格の種類には、正常価格と限定価格があります。
正常価格とは、多くの買い手と売り手が存在する中で成立する価格であります。一般には市場価格と言われています。
鑑定評価でも、この正常価格として評価するのがほとんどです。
限定価格とは、特定の買い手と売り手のみで成立する適正な価格のことを言います。例えば以下の図をご覧ください。
黒枠の土地は、間口が1mしかありません。都市計画区域内においては、間口が2m以上なければ、建築はできません。その隣の土地は、間口が1mの細長い土地で、何ら価値がありませんが、隣接者から見れば、間口が2mになるので、建築が可能となり、隣接者に限定されますが、かなり高い価値となります。これを当事者間だけに限定される経済的合理的な価格、すなわち限定価格となります。
ただし、隣接地と併合すれば限定価格となるのではなく、併合することにより、増分価値が生じた場合だけ、限定価格となります。
ほかにも、宅地開発において、その土地を併合しなければ、開発許可が取れない、地主が借地権を買い取る場合、逆に借地権者が底地を買い取る場合も限定価格になる可能性が高いです。
立退料 [不動産鑑定]
先日、大家さんから立ち退きを求められ、その場合の立退料についてのご相談が建物の借主さんからありました。
鑑定評価の場合、立退料は居住用は借家権の評価となりますが、店舗の場合、借家権価格と営業補償料が立退料となるのが一般的です。
まず、基本的なことを申しますと、貸主は正当な事由がないのに更新を拒絶したり、明け渡し求めることはできません。
では、正当事由とは何かというと、これは法律問題になって、弁護士さんの範疇ですが、貸主が売却したいからなどの理由は借主が家賃滞納や契約違反の利用をしていない限り、正当事由とは言えないでしょう。
したがって、貸主が立ち退きを求めるときは、立退料を支払うのが一般的です。
では、いくらが妥当かというと、これは案件によって様々です。
店舗などでは、場所的利益の喪失、つまり、その場所だから、顧客が増えてきたのに、場所が変わると顧客へ減ってしまうなどの可能性があるときは、営業補償なども発生し、かなりの額になることもあります。
居住用の場合、それほど高額にはならないかと思いますが、それでも、双方の経済状態、借りている年数、家族関係、戸建か、アパートなどにも関連してきます。
一応の目安として、相続税の財産評価基準や公共用地の取得に伴う場合などで、立退料には2通りの計算方法があります。第一は以下のとおりです。
土地価格 × 借地権割合 × 借家権割合 + 建物価格 × 借家権割合 = 立退料
この場合、借地権割合や借家権割合は路線価で調べます。借地権割合は地域によって、異なりますが、借家権割合は30%となっています。
しかしながら、居住用の場合現実的には15%~20%程度が妥当ではないかと思います。
また、上記計算式は、戸建の場合であり、アパートやマンションの場合は、全体の立退料から対象賃貸面積÷総賃貸面積が立退料となります。
つまり、全体の面積に対する借りている面積割合が対象になるということです。
この場合、土地価格や建物価格がいくらなのかが問題となりますが、これは地元不動産業者などで聞く以外にはありません。
路線価格もありますが、時価よりも低いのが一般的で参考にならないケースもあります。
もう一つの方法は、以下のとおりです。
現在、借りている物件と同等の物件を新たに借りたら、現行の家賃よりも高くなってしまう場合、その差額を2年間補償するというものです。
例えば、現行の賃料が5万円で、新たに同等の物件を借りたら6万5千円もする場合、1万5千円×24か月=36万円が算出されます。この場合、引越代、新たな物件を斡旋した業者への仲介手数料、礼金が発生している場合は礼金も対象となります。さらに、住所変更のはがきを知り合に発送する郵送費、印刷代なども加算されます。
要は、移転に伴う費用が立退料になるということですが、この方法は、場所にもよりますが、同等の物件が、現行賃料より高くない場合、つまり差額賃料が少ない場合は、当然立退料も低くなります。
また、借主の意思に反して、立ち退かなければならないなど感情的な側面が反映されていない面もあります。
したがって、この方法では、算出した額にプラスアルファを加算することが妥当でしょう。
借家権の鑑定評価は、店舗などの場合、相手との交渉で鑑定評価が役に立つ場合がありますが、居住用の場合、費用対効果が小さいように思います。
平成27年地価公示発表2 [不動産鑑定]
前回に引き続き、平成27年の地価公示価格について見てゆきます。
土地総合情報ライブラリーによると東京圏及び大阪圏の住宅地の地価上昇率上位10位は以下のとおりです。少し見にくいですが、表をクリックすると拡大します。
東京圏ではやはり、トップは港区南麻布の高級住宅地、港-16が11.2%とかなり高い上昇率を示しました。また、都心への利便性に優れ、東京オリンピックの開催決定で、高層マンションの開発期待感から中央区佃にある中央-6も9.1%と高い上昇を示しています。昨年同様、東京圏の地価は、東京オリンピックを控え、今後も上昇してゆくのではないかと予測されます。
では、大阪圏のトップは神戸市灘区の灘-6が6.2%で、東京圏と比較するとやや地価の上昇は弱い感じがします。
ところが、全国的に見て大幅な上昇率を示しているのが、いわき市です。
いわき-51は17.1%になっています。
東京の地価と比べると、地価水準が低いので、上昇率だけでは、当該地区の景気回復が進んでいるとは一概には言えませんが、前年同様に高い上昇率を示したのは、この地区は3.11東日本大震災で被災によって、避難住民が移転してきたため、需要が急上昇したとものと思われます。
昨年も触れましたが、この地区は、大震災以前の土地需要は総じて弱い地区で、地価は下落傾向にあり、大震災が需要を押し上げたという側面はあります。
したがって、その需要が一巡したら、下落に転じる可能性があります。
北陸新幹線の開業で、一気に上昇したのが、金沢市広岡の商業地・金沢5-13で17.1%もの高い上昇率です。
それでは、東京圏、大阪圏の商業地はどうでしょうか?
東京圏では、銀座4丁目の中央5-22が14.2%とかなり高い上昇率となりました。この銀座地区は、上位10位のなかで、新宿区の新宿5-24と港5-10の2地点を除いて、8地点を占め、銀座地区は旺盛な需要が認められます。
大阪圏では、中央区宗右衛門町の大阪中央5-2が11.3%、中央区心斎橋筋の大阪中央5-23が10.7%など、中心的な商業地域の回復が目立っています。
このように利便性の高い住宅地や収益性の高い商業地の地価は総じて回復してきた感がありますが、人口が減少している都市などは、依然として下落傾向が続いており、二極化が進んでいる結果となりました。